《第弐話》人のいない世界に迷い込んだ。
高校生の私は某地方裁判所で迷いに迷った。
方向音痴ではなかった。しかし、この広い空間に反して人がいない。
その空気に高校生の私はパニックになっていた。
だがやっとの思いで裁判が行われているであろう法廷の前についた。
事前に入り口で見た法廷の号室にたどり着いたのだが、
そこに数人の年配の男性たちが話していたことが何よりほっとした。
人がいる。
裁判所に行くと人のいない世界に迷い込んだ感覚に私は今でも陥る。
自分が裁かれるわけではないのに不安になるのだ。
高校生の私は法廷の入り口の前で立ち止まった。
「どこから入ればいいのか」
数分迷ったところで、近くの男性のうちの一人が声をかけてきた。
「兄ちゃんそこから入ったらみれるで」
正直驚いたがお礼を言い、私は法廷に足を踏み入れた。